肺高血圧症

疾患・症状

肺高血圧症とは?

肺高血圧症とは、肺動脈の血圧が異常に上昇する疾患であり、進行すると心臓や全身の健康に深刻な影響を及ぼします。通常、肺動脈の血圧は低めに保たれていますが、この病気では異常に高まり、心臓に負担をかけることになります。特に、右心室が影響を受けるため、長期間放置すると右心不全を引き起こす可能性があります。

肺高血圧症の分類

肺高血圧症は原因によりいくつかの種類に分類されます。

1. 原発性肺高血圧症(特発性肺動脈性肺高血圧症:IPAH)

原因が特定できないタイプで、比較的まれな疾患ですが、若年者や女性に多い傾向があります。

2. 二次性肺高血圧症(続発性肺高血圧症)

何らかの基礎疾患が原因となる肺高血圧症です。主な原因として、以下のような疾患が挙げられます。

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD):肺の構造が破壊され、酸素の供給が不十分になり、肺動脈の圧が上昇します。
  • 間質性肺炎:肺の組織が線維化し、肺の弾力性が失われることで血流が制限され、肺動脈圧が高まります。
  • 肺血栓塞栓症:肺動脈が血栓で詰まることにより、肺動脈圧が異常に上昇します。
  • 先天性心疾患:心臓の奇形が原因で肺への血流が異常になり、肺高血圧症を引き起こすことがあります。
  • 膠原病(全身性硬化症、全身性エリテマトーデスなど):血管の炎症や損傷により、肺動脈の異常が生じることがあります。

肺高血圧症の症状

肺高血圧症の初期症状は比較的軽度で、見過ごされることも多いですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。

  • 労作時の息切れ:最も一般的な症状で、軽い運動でも息切れしやすくなります。
  • 疲れやすさ:心臓の負担が増えることで、倦怠感を感じやすくなります。
  • 動悸:心臓が強く鼓動する感覚があり、特に運動時に顕著になります。
  • 胸痛:血流障害により、胸部に痛みが生じることがあります。
  • 失神:重度になると脳への血流が不足し、失神を引き起こすことがあります。
  • 下肢浮腫:右心不全が進行すると、血流が滞り、足がむくみやすくなります。

診断方法

肺高血圧症は、以下のような検査によって診断されます。

  1. 心エコー検査:心臓の動きや肺動脈圧を測定します。
  2. 心臓カテーテル検査:直接、肺動脈の圧を測定する確定診断のための検査です。
  3. 胸部X線検査:肺や心臓の異常を確認します。
  4. CTスキャン:肺血栓塞栓症の有無を調べます。
  5. 血液検査:膠原病などの基礎疾患の有無を確認します。
  6. 運動負荷試験:心肺機能を評価するために行われることがあります。

治療方法

肺高血圧症の治療は、原因に応じた対策と症状の緩和を目的としています。

1. 原因疾患の治療

二次性肺高血圧症の場合、基礎疾患の治療が最も重要です。例えば、COPDによる場合は酸素療法や気管支拡張薬を使用し、膠原病が原因の場合は免疫抑制剤を用いることがあります。

2. 薬物療法

肺高血圧症の症状を軽減し、進行を抑えるために以下の薬が用いられます。

  • プロスタサイクリン製剤(エポプロステノールなど):肺動脈を拡張し、血流を改善します。
  • エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタンなど):血管収縮を抑え、血流を改善します。
  • ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬(シルデナフィルなど):血管を拡張し、血圧を下げます。
  • 利尿薬:右心不全に伴う浮腫を改善するために使用されます。
  • 抗凝固薬:血栓を予防するために用いられることがあります。

3. 外科的治療

重症の場合は外科的な治療が検討されることもあります。

  • 肺移植:末期肺高血圧症の患者に対し、肺移植が選択肢となることがあります。
  • バルーン肺動脈形成術(BPA):血管の閉塞を開く処置で、一部の患者に有効です。

生活習慣の改善

肺高血圧症の管理には、生活習慣の改善も重要です。

  • 適度な運動:医師の指導のもと、無理のない範囲で運動を行うことが推奨されます。
  • 禁煙:喫煙は肺の機能を悪化させ、病気を進行させるため、禁煙が必須です。
  • 塩分制限:むくみを防ぐために、塩分摂取を控えることが重要です。
  • ストレス管理:ストレスは血圧上昇の一因となるため、リラックスする時間を確保しましょう。

まとめ

肺高血圧症は早期発見・早期治療が重要な疾患です。息切れや動悸などの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが推奨されます。治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、症状の進行を抑え、より良い生活を維持することが可能です。

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