歯周病とは? その原因と予防策
1. 歯周病の概要
歯周病とは?
歯周病は、歯肉(歯茎)や歯槽骨などの歯周組織に炎症が生じる疾患です。進行すると歯を支える骨が破壊され、最終的には歯を失う原因となります。日本では成人の約8割が何らかの歯周病にかかっていると言われており、非常に身近な病気のひとつです。
歯周病の原因
口腔内には300〜500種類もの細菌が存在し、飲食物の糖を利用して増殖します。細菌が産生するグルカンという物質によって、歯の表面には「プラーク(歯垢)」と呼ばれる細菌の集合体が形成されます。プラーク1mgには10億以上の細菌が含まれており、これがむし歯や歯周病の原因となるのです。
歯周病の進行段階
歯周病は大きく2つの段階に分類されます。
- 歯肉炎:炎症が歯肉に限局している状態。
- 歯周炎:炎症が歯槽骨にまで波及し、骨の吸収が進む状態。
歯肉炎の段階で適切なケアを行えば回復が可能ですが、歯周炎まで進行すると治療が必要になります。
2. 歯周病のリスク要因
1. プラークの蓄積
歯磨きが不十分な場合、歯と歯の間や歯周ポケットにプラークが溜まりやすくなり、細菌が増殖します。
2. 生活習慣
喫煙、ストレス、偏った食生活、睡眠不足などが歯周病を悪化させる要因となります。
3. 加齢
加齢に伴い、免疫機能が低下することで歯周病にかかりやすくなります。
4. 全身疾患
糖尿病をはじめとする慢性疾患があると、歯周病のリスクが高まります。
5. 遺伝的要因
家族に歯周病患者が多い場合、遺伝的に歯周病にかかりやすい可能性があります。
3. 歯周病が引き起こす全身の健康リスク
近年、歯周病が全身のさまざまな疾患と関連していることが明らかになっています。歯周組織の炎症が慢性化することで、細菌や炎症性物質が血流を介して全身に広がると考えられています。
1. 誤嚥性肺炎
高齢者に多い誤嚥性肺炎は、歯周病菌が唾液とともに気管に入り込むことで発症します。特に寝たきりの人や嚥下機能が低下している人は注意が必要です。
2. 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
歯周病菌が血管内に入り込むと、動脈硬化を引き起こしやすくなります。これが原因で血管が詰まり、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
3. 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
歯周病菌が血管に炎症を引き起こすことで、血栓ができやすくなります。これにより、心筋梗塞や狭心症のリスクが高まります。
4. 早産・低体重児出産
妊婦が歯周病にかかっていると、炎症物質が胎盤を通じて胎児に影響を及ぼし、早産や低体重児出産のリスクが高まることが分かっています。
5. 糖尿病との関係
歯周病は糖尿病の症状を悪化させるだけでなく、糖尿病患者は免疫機能が低下しやすいため、歯周病を発症しやすくなります。相互に影響を及ぼし合うため、両方の病気を適切に管理することが重要です。
4. 歯周病の予防と対策
1. 正しい歯磨き
毎日の適切な歯磨きが最も基本的な予防策です。
- 歯ブラシの選び方:柔らかめの毛先が細い歯ブラシを使用すると、歯周ポケットの汚れを効果的に落とせます。
- ブラッシングの方法:力を入れすぎず、小刻みに動かしながら磨くことが大切です。
- デンタルフロス・歯間ブラシ:歯と歯の間のプラークを除去するために使用します。
2. 定期的な歯科検診
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、半年に1回程度の歯科検診を受け、専門的なクリーニングを行うことが推奨されます。
3. 生活習慣の改善
- 禁煙:喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病のリスクが高くなります。
- バランスの取れた食生活:ビタミンCやカルシウムを多く含む食品を積極的に摂取すると、歯周組織の健康を維持しやすくなります。
- ストレス管理:ストレスが免疫機能を低下させるため、適度な運動や趣味の時間を持つことが大切です。
5. 歯周病の治療方法
1. スケーリング(歯石除去)
歯科医院では、専用の器具を使って歯石を除去し、細菌の温床となるプラークの蓄積を防ぎます。
2. ルートプレーニング
歯周ポケット内の汚れを徹底的に除去し、歯根の表面を滑らかにする治療法です。
3. 外科的治療
重度の歯周病では、歯肉を切開して炎症部分を除去する手術が行われることもあります。
まとめ
歯周病は単なる口の中の病気ではなく、全身の健康にも深刻な影響を及ぼすことが分かっています。毎日の歯磨きと定期的な歯科検診を習慣にし、生活習慣を見直すことで、歯周病を予防することが可能です。健康な歯を維持することは、長寿と生活の質の向上にもつながるため、早めの対策を心がけましょう。

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