第1章:なぜ台風や悪天候で調子が狂うのか?
晴れている日は元気なのに、雨の日や台風が近づくとなんだかだるい、頭が痛い、気分が沈む。
「気のせいかな」と流してきた人もいるかもしれませんが、これは気象の変化による体と心の反応かもしれません。
こうした不調は「気象病」と呼ばれています。近年ではテレビや雑誌でも取り上げられ、ようやく「体質や気合の問題ではない」と認識されつつあります。
● 気圧と自律神経の関係
天気が崩れる前にやってくる「低気圧」。この気圧の変化は、体内で目に見えない混乱を引き起こします。特に影響を受けやすいのが、自律神経です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」のバランスで、体温・血圧・消化・ホルモン・感情までコントロールしています。低気圧になると、副交感神経が優位になり、体が「休もうモード」に。眠気、だるさ、集中力の低下を感じやすくなります。
● 内耳が“気圧のセンサー”
さらに、内耳(ないじ)という器官が気圧変化に敏感に反応します。内耳は三半規管の一部で、平衡感覚をつかさどる場所。ここが急激な変化を感知すると、めまいや頭痛、吐き気を引き起こします。
「飛行機の離陸やトンネル通過で耳がキーンとする」あの感覚と同じような圧の変化が、低気圧でも体の中で起こっているのです。
第2章:天気とメンタルの深い関係
気圧や天気の影響を受けるのは、体だけではありません。心にもじわじわと影響が出ることが、近年の研究で分かってきています。
● 太陽が少ないと“幸せホルモン”が減る
曇りや雨が続くと、太陽の光を浴びる時間が減ります。日光には「セロトニン」という脳内物質を分泌させる働きがあります。このセロトニンは、心を安定させ、前向きな気分を作り出す“幸せホルモン”とも呼ばれています。
セロトニンが不足すると、次のような症状が出やすくなります:
- 気分が沈む、落ち込む
- イライラする
- やる気が出ない
- 不安が強くなる
- 過食または食欲減退
● 季節性うつ(SAD)との違い
冬場に多く見られる「季節性うつ」とは別に、天気の変化だけで気分が沈む人もいます。これは「気象性うつ」とも呼ばれ、年齢や性別を問わず起こります。
第3章:体調・気分の変化を見極めるチェックリスト
「自分は気象の影響を受けやすい体質なのか?」を知るために、以下のチェックをしてみましょう。
- 天気が悪くなる前に頭痛や肩こりが出る
- 台風が近づくと気分が落ち込みがち
- めまいや耳鳴りがしやすい
- 気分の浮き沈みが天気と連動している
- 雨の日はいつもより体が重く感じる
- 気圧予報に敏感に反応してしまう
3つ以上当てはまるなら、気象病や気象メンタルの傾向が強いといえます。
● 気圧アプリや天気日記の活用
「頭痛ーる」「ウェザーニュース」などのアプリでは、気圧グラフを予測してくれます。不調の起こりやすい時間帯をあらかじめ把握し、準備をすることができます。
自分の「不調のパターン」を記録しておくと、改善策を立てる手助けになります。
第4章:低気圧に負けない体をつくる生活習慣
天気を変えることはできませんが、「自律神経が乱れにくい体」はつくれます。
● 朝日を浴びる習慣
起きてすぐにカーテンを開けて太陽光(自然光)を浴びること。これだけでセロトニンが分泌され、自律神経のリズムが整い、気象変化にも強くなっていきます。
● 体を温める
気圧の変化で血流が悪くなると、頭痛や肩こりも悪化しやすくなります。入浴・白湯・温かい食べ物で「内臓から温めること」を意識しましょう。
● 食事で“揺れない体”を支える
- マグネシウム(ナッツ、海藻、バナナ)
- ビタミンB群(豚肉、納豆、卵)
- 鉄分(赤身肉、小松菜、レバー)
- オメガ3(青魚、亜麻仁油)
これらの栄養素は、神経の興奮を抑えたり、脳の働きを助ける働きがあります。
第5章:気分が沈むときの“レスキュー行動”
悪天候のせいで「今日はもう無理…」と感じる日。そんな日は、無理に立て直そうとせず、“レスキュー行動”で自分をいたわることが大切です。
● 五感を癒す
- 【香り】ラベンダー・オレンジ・ユーカリなどのアロマを焚く
- 【音】雨音や自然音、ヒーリング音楽
- 【触】湯たんぽや毛布のぬくもり
- 【視】観葉植物や写真、やさしい色のライト
- 【味】温かい飲み物、ハーブティー、梅干しや味噌汁
● “がんばらない”と決める
「今日中に片付けなきゃ」「やらなきゃ」に押しつぶされると、余計に動けなくなります。体調に合わせて、タスクをあえて“削る・延期する”のも大事な自己防衛です。
第6章:台風前の“備え”が心と体を守る
気象病のつらさは「予期できる」ことで軽減できます。
● 気圧の下降を事前に知る
アプリで「明日の昼から急降下」と分かっていれば、前日までに予定を調整したり、作業を分散させることができます。
● 通勤・仕事・子育ての“逃げ道”を用意する
- 台風の日は在宅勤務に切り替える
- 預け先や送迎の代替案を考えておく
- 早めに買い物や用事を済ませておく
「どうしようもない状況に追い込まれないように備える」ことが、心の安定につながります。
第7章:薬やサプリに頼る選択肢も
薬やサプリは、「ダメなこと」「甘え」ではありません。症状が強い人は、医学的なケアを併用するのも一つの手です。
● 酔い止め薬
意外かもしれませんが、酔い止めに含まれる「抗ヒスタミン薬」が内耳のバランスを整えるのに効果的な場合があります。
● 漢方薬
- 五苓散(ごれいさん)…頭痛・むくみに
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)…めまい・不安に
- 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)…気圧変化に伴う頭重感
● サプリや栄養補助食品
- ビタミンD(日照不足によるうつ気分に)
- 鉄サプリ(脳疲労・冷えに)
- CBD(不安やイライラの緩和)
第8章:天気に振り回されない心のつくり方
天気が悪くなるたびに「また調子が悪くなる」と思うのはつらいことです。でも、不調の原因が“自分のせい”ではないと分かることが第一歩です。
● 「それ、天気のせいかも」と気づく習慣
無理に前向きになる必要はありません。ただ、「今は低気圧だから仕方ない」と受け入れることで、気持ちはずいぶん楽になります。
● 心の波に逆らわない
気象によって揺れるのは、自然なこと。人間だって自然の一部です。体や心が「今日は休もう」と言っているのなら、それに従ってみる。
● 自分を責めないことが、最高のセルフケア
天気は変えられませんが、「対応の仕方」は変えられます。そして、天気に左右される自分を責めないであげることが、一番のセルフケアかもしれません。
おわりに
台風や悪天候で調子が狂うのは、決して「気のせい」や「甘え」ではありません。
科学的にも説明がつく、“体質や脳のしくみ”の問題なのです。
この記事が、「なんでこんなに調子が悪いんだろう…」と悩むあなたの手助けになりますように。
そして、少しでも快適に、優しく、穏やかに過ごせる毎日を、取り戻せますように。

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