胃食道逆流症

疾患・症状

胃食道逆流症とは?

胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflux Disease, GERD)は、胃酸をはじめとする胃の内容物が食道へ逆流し、食道粘膜を刺激することで発症する病気です。胸やけや呑酸(酸っぱい液体が口の中にこみ上げる症状)を引き起こし、重症化すると食道の炎症や潰瘍を伴うこともあります。

GERDは、近年、生活習慣の変化や食生活の欧米化によって増加傾向にある疾患です。本記事では、その原因、症状、診断方法、治療法、さらには予防策について詳しく解説します。


GERDの分類と特徴

GERDは、内視鏡検査によって以下の2つに分類されます。

1. 逆流性食道炎(炎症型GERD)

食道粘膜に炎症や潰瘍が確認されるタイプであり、内視鏡検査によって診断されます。炎症が見られる場合には、「逆流性食道炎」と呼ばれ、症状の程度によって重症度が分類されます。

2. 非びらん性胃食道逆流症(NERD)

内視鏡検査では炎症や潰瘍が確認されないにもかかわらず、胸やけなどの症状を呈するタイプです。食道の知覚過敏や蠕動運動の異常が関与していると考えられています。


GERDの主な原因

GERDは、以下の要因によって引き起こされることが多いです。

1. 下部食道括約筋(LES)の機能低下

食道と胃の間には、胃酸の逆流を防ぐ役割を持つ「下部食道括約筋(LES)」があります。この筋肉が緩むことで胃の内容物が食道へ逆流しやすくなります。

原因としては、以下の要因が挙げられます。

  • 加齢:年齢とともに括約筋の機能が低下する
  • 食道裂孔ヘルニア:胃の一部が横隔膜を通って胸腔に出る状態で、逆流が起こりやすくなる
  • 過食や高脂肪食の摂取:胃の内圧が上がり、逆流を引き起こしやすい

2. 胃酸分泌の増加

胃酸が過剰に分泌されると、逆流した際に食道粘膜へのダメージが大きくなります。胃酸分泌の増加には以下の要因が関与します。

  • ピロリ菌未感染:近年、ピロリ菌の感染率が減少したことで、胃酸分泌が多い人が増えている
  • ストレス:自律神経のバランスが崩れることで胃酸分泌が増加する
  • アルコールやカフェインの過剰摂取:胃酸分泌を刺激する

3. 生活習慣の影響

日常生活における習慣もGERDの発症に関与します。

  • 食後すぐに横になる:重力の影響で胃の内容物が食道に逆流しやすい
  • 肥満:腹圧が上昇し、胃酸の逆流を引き起こす
  • 喫煙:下部食道括約筋の機能を低下させる

GERDの主な症状

GERDの代表的な症状には以下のものがあります。

1. 胸やけ

食道に胃酸が逆流することで焼けつくような痛みを感じる症状です。

2. 呑酸(どんさん)

酸っぱい液体や苦味のある液体が口の中にこみ上げる症状です。

3. 胸部不快感や胸痛

食道への刺激が原因で、心臓病と間違えられることもあります。

4. 慢性的な咳や喉の違和感

胃酸の逆流が喉や気管に影響を及ぼし、慢性的な咳や喉の異常感を引き起こすことがあります。


GERDの診断方法

GERDの診断には以下の方法が用いられます。

1. 問診

症状の頻度や生活習慣について詳しく聞き取ります。

2. 内視鏡検査

食道粘膜に炎症やびらんがないか確認します。

3. pHモニタリング検査

24時間食道内のpHを測定し、胃酸の逆流回数を調べます。


GERDの治療方法

1. 薬物療法

GERDの治療には以下の薬が用いられます。

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸の分泌を強力に抑える
  • H2ブロッカー:胃酸の分泌を抑制する
  • 制酸薬:胃酸を中和する

2. 生活習慣の改善

  • 食事の工夫:脂肪分の多い食事や刺激物を避ける
  • 就寝時の姿勢:頭を高くして寝ることで逆流を防ぐ
  • 体重管理:適正体重を維持することで腹圧を抑える

3. 外科的治療

薬物療法が効果を示さない場合には、逆流を防ぐための手術が検討されます。


GERDの予防策

GERDを予防するためには、以下の点に注意しましょう。

  1. 規則正しい食生活を心がける
  2. 食後すぐに横にならない
  3. 適度な運動を行う
  4. ストレスを溜めない
  5. アルコールやカフェインの摂取を控える

まとめ

GERDは、生活習慣や食生活の影響を大きく受ける疾患ですが、適切な治療と生活習慣の改善によって症状をコントロールすることが可能です。胸やけや呑酸などの症状が頻繁に見られる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

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