第1章 はじめに
「健康のために食品添加物はできるだけ避けたい」──そう思っている人は多いでしょう。スーパーやコンビニで「無添加」「保存料不使用」といった表示を目にするたびに、つい手を伸ばしたくなる人もいるはずです。
一方で、私たちの食卓を支えているのもまた食品添加物です。ふわふわのパン、いつ食べても同じ味のハムやソーセージ、コンビニのおにぎりやサラダ──こうした「安くて便利で美味しい食品」の裏側には、必ずと言っていいほど添加物の存在があります。
ではなぜ、体に悪いとされる添加物がこれほどまでに使われているのでしょうか?
そして、私たちはなぜ無意識に摂りすぎてしまうのでしょうか?
本記事では、「体に悪いとされる代表的な添加物リスト」を整理し、さらに「なぜ入っているのか」「なぜ摂りすぎるのか」を掘り下げます。単に「怖いから避けよう」という結論ではなく、“知って選ぶ力”を身につけることが目的です。
第2章 添加物とは何か?
そもそも「添加物」とは何を指すのでしょうか?
厚生労働省によれば、食品添加物とは「食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で、食品に添加・混和などの方法によって使用するもの」と定義されています。
大きく分けると以下の4種類があります:
- 指定添加物:厚労省が安全性を審査して認可したもの(例:ソルビン酸、アスパルテーム)
- 既存添加物:長年日本で使用されてきた天然由来のもの(例:昆布の抽出物)
- 天然香料:バニラや柑橘の香りなど、自然由来で食品に香りを与えるもの
- 一般飲食物添加物:はちみつやゼラチンなど、食品としても利用されるもの
ここで問題になるのは、**「指定添加物」や「保存料・合成甘味料・合成着色料」**など、一部の合成化学物質です。
日本では約1500種類以上の添加物が認可されていますが、EUでは数百種類しか認可されていないとも言われ、国際的に基準は大きく異なります。つまり、「日本でOKでも、海外では危険とされているものがある」という現実があるのです。
第3章 体に悪いとされる代表的な添加物リスト
1. 人工甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)
- 用途:カロリーゼロ飲料、ダイエット食品
- 懸念点:腸内環境の悪化、耐糖能異常、頭痛やめまいの報告
- 代表食品:ゼロカロリー飲料、ガム、プロテインバー
2. 保存料(ソルビン酸、安息香酸ナトリウムなど)
- 用途:食品の腐敗を防ぎ長期保存を可能にする
- 懸念点:肝機能障害、発がん性の指摘
- 代表食品:漬物、清涼飲料水、ジャム
3. 発色剤(亜硝酸ナトリウム)
- 用途:ハム・ソーセージを鮮やかなピンク色に保つ
- 懸念点:体内で発がん性物質「ニトロソアミン」に変化する可能性
- 代表食品:加工肉全般
4. 着色料(タール系色素、赤色○号など)
- 用途:見た目を良くし、消費者に美味しそうに見せる
- 懸念点:アレルギーや発達障害との関連が研究されている
- 代表食品:お菓子、清涼飲料、カラフルな加工食品
5. 酸化防止剤(BHA、BHT)
- 用途:油脂の酸化を防ぎ、食品の風味を保つ
- 懸念点:発がん性の可能性、アレルギー症状
- 代表食品:スナック菓子、揚げ物、マーガリン
👉 こうした添加物は「少量ならすぐに害があるわけではない」ものの、日常的に積み重ねることでリスクが増すと考えられています。
第4章 なぜ食品に入っているのか?
では、なぜ企業はこうした添加物を使い続けるのでしょうか?理由は大きく4つあります。
- 保存性を高めるため
食品が長持ちすれば、廃棄コストが減り、流通も安定します。コンビニ弁当が夜まで安全に食べられるのも保存料のおかげです。 - 見た目を良くするため
消費者は「鮮やかな色=新鮮で美味しそう」と判断します。加工肉が茶色く変色していたら誰も買いません。 - 味を均一にするため
原料の質にばらつきがあっても、添加物で補えば「いつ食べても同じ味」が保証されます。これがブランド力の維持につながります。 - コスト削減のため
天然の高価な原料を使うより、合成甘味料や化学調味料で“安く・早く・大量に”製造できるため、企業にとっては利益率が上がります。
つまり、添加物は「企業の利益・流通の安定・消費者の見た目や味の期待」に応えるために欠かせない存在になっているのです。
しかし、その裏で「健康リスク」という代償を払っている可能性がある──これが大きな問題なのです。
第5章 なぜ摂りすぎてしまうのか?
「体に悪いとわかっているのに、なぜ添加物を摂りすぎてしまうのか?」
その理由は大きく分けて 生活習慣・食品産業の仕組み・人間の味覚の性質 にあります。
1. 外食・コンビニ・加工食品の多用
現代のライフスタイルでは「短時間で食べられる食品」が重宝されます。忙しい会社員や子育て世代にとって、コンビニ弁当や冷凍食品、インスタントラーメンは強い味方です。
しかし、これらの加工食品は 保存・見た目・味の均一性 を重視して作られているため、ほぼ必ず添加物が含まれています。
気づかぬうちに、朝の菓子パン・昼の弁当・夜の惣菜という一日の食事が すべて添加物入り ということも珍しくありません。
2. 「安い・便利・美味しい」のトリプル効果
消費者が食品を選ぶ際、最も重視するのは価格と味です。
- 天然素材を使った無添加食品は高い
- 合成甘味料・化学調味料を使えば低コストで「美味しい」と感じさせられる
結果として、安価で美味しい食品ほど添加物に頼る比率が高いのです。消費者は「安くて助かる」と思いながら、知らず知らずのうちに摂取量を増やしてしまいます。
3. 甘味料やうま味調味料の「依存性」
人工甘味料やMSG(グルタミン酸ナトリウム)は、人間の「もっと欲しい」という欲求を刺激します。
- 人工甘味料 → 血糖値は上がらないが、脳は「甘さ=糖を期待」して混乱。余計に甘いものを欲してしまう。
- 化学調味料 → 舌が「うま味」を覚えてしまい、自然な素材の味では物足りなくなる。
この 「舌のリセットが効かなくなる現象」 が、過剰摂取の大きな要因です。
4. ラベル表示の盲点
「保存料不使用」「無添加」と書かれていても、実は別の添加物が入っているケースは少なくありません。
例えば「保存料は使っていません」と書かれていても、実際にはpH調整剤や酸味料で同じ効果を持たせている場合があります。
こうした表示に安心してしまうことで、結果的に摂取を増やしてしまうのです。
👉 つまり、私たちが無意識に摂りすぎてしまうのは、食品業界の仕組み・消費者心理・味覚の性質が複雑に絡み合っているからだと言えます。
第6章 健康リスクの科学的根拠
では実際に、添加物の摂取はどのような健康リスクをもたらすのでしょうか?ここでは科学的な知見をもとに整理します。
1. 腸内環境への影響
最新の研究では、人工甘味料が腸内細菌の多様性を乱すことが報告されています。
腸内細菌バランスが崩れると、肥満・糖尿病・アレルギーなどのリスクが高まることがわかっています。
2. 代謝・ホルモン系への影響
- 人工甘味料 → インスリン抵抗性を悪化させる可能性
- 亜硝酸ナトリウム(発色剤) → 血中でニトロソアミンに変化し発がんリスクを高める可能性
- BHA・BHT(酸化防止剤) → 動物実験で発がん性が指摘されている
「少量なら安全」という基準(ADI:一日許容摂取量)はあるものの、複数の添加物を日常的に摂取する「カクテル効果」については未解明の部分が多いのです。
3. アレルギー・神経系への懸念
- 合成着色料 → 子どもの多動症(ADHD)との関連が報告された研究もある
- MSG → ごく一部の人に頭痛やしびれを引き起こす「中華料理症候群」として知られる
4. 特に注意が必要な人々
- 子ども:体重あたりの摂取量が多くなりやすく、発達への影響が懸念される
- 妊婦:胎児の発育に影響を与える可能性
- 高齢者:代謝能力が落ちており、体内に蓄積しやすい
👉 つまり「今すぐ健康被害が出るわけではない」が、長期的に積み重なることで病気のリスクを高めるのが添加物の怖さです。
第7章 海外と日本の基準の違い
ここで注目すべきは、国によって認可される添加物が大きく違うという点です。
1. EU(ヨーロッパ連合)の厳しい規制
EUでは消費者保護の観点から、リスクが少しでも疑われる添加物はすぐに規制されます。
例:
- 赤色2号、黄色4号などの合成着色料 → ADHDとの関連が疑われ、EUでは使用制限
- BHA・BHT(酸化防止剤) → ペットフードでは禁止、食品でも厳格に制限
2. 日本の現状
日本では約1500種類以上が認可されており、世界的に見ても多い部類です。
背景には、
- 加工食品市場が大きい
- 食品ロス削減やコスト削減のため添加物利用が不可欠
- 企業と行政の癒着を指摘する声もある
という事情があります。
3. 「安全性の考え方」の違い
- 日本:問題が明確に証明されるまでは使用を許可(リスクが立証されるまでOK)
- EU:疑わしい時点で禁止(リスクの可能性があればNG)
この差は非常に大きく、結果として 「日本で日常的に食べているものが、海外では規制対象」 という逆転現象が起きています。
4. 消費者ができること
- 輸入食品のラベルを確認し、国ごとの規制差を知る
- 「海外では禁止されている添加物」を意識して避ける
- 規制の違いを知ることが「選ぶ力」を養う第一歩
👉 添加物そのもの以上に、「国の基準の違いを知る」ことが、健康リスクを自己防衛するための大切な視点なのです。
第8章 無添加・オーガニック表示の落とし穴
「無添加だから安心」「オーガニックだから健康にいい」──こうした言葉を目にすると、私たちはつい「体に良さそう」と思ってしまいます。
しかし実際には、「無添加」や「オーガニック」の表示にも落とし穴があるのです。
1. 「無添加=安全」ではない
「保存料無添加」と表示されていても、他の添加物(pH調整剤、酸化防止剤など)で代替している場合があります。つまり「特定の添加物を使っていない」だけであって、「一切使っていない」という意味ではありません。
例:
- 「合成着色料不使用」 → 天然由来の着色料(カロチノイドなど)は使われている
- 「保存料不使用」 → pH調整剤や加熱殺菌で同等の効果を狙っている
👉 「無添加」のラベルを見たら、「何が無添加なのか?」を確認することが重要です。
2. オーガニック=完全に無添加ではない
有機JAS認証を受けたオーガニック食品でも、加工段階で認められた添加物は使用可能です。
たとえば、パンやお菓子などの有機食品にも「膨張剤」や「一部の保存料」が入ることがあります。
3. 健康志向マーケティングのワナ
食品業界は「消費者の健康意識」を巧みに利用しています。
- 「自然派」「オーガニック風」パッケージで安心感を与える
- 実際には糖分や脂質が高いのに「無添加」を強調して販売する
4. 消費者ができる工夫
- ラベルの全成分を見る習慣をつける
- 「無添加」の文字に惑わされず、「具体的に何が入っているか」を確認する
- 「本当にシンプルな食品=原材料が少ない食品」を優先的に選ぶ
👉 「無添加=安全」ではなく、「正しい情報を見抜く力」こそが健康を守る武器になるのです。
第9章 上手に避ける工夫
「もう加工食品は全部やめた方がいいの?」と思うかもしれませんが、現代社会で完全に避けるのは現実的ではありません。
重要なのは “添加物を減らす生活習慣” です。
1. ラベルチェックのコツ
- 「カタカナが多すぎる食品」は避ける
- 「安息香酸」「ソルビン酸」「亜硝酸Na」など、代表的な添加物名を覚えておく
- 原材料がシンプル(例:米、塩、昆布)な食品を優先する
2. 買うなら加工度の低い食品
- 冷凍野菜や冷凍魚は比較的シンプルで安全性が高い
- おにぎりなら具がシンプルなもの(梅干し、昆布など)を選ぶ
- 調味料も「本みりん」「丸大豆醤油」など伝統製法のものを選ぶ
3. 自炊・作り置きのすすめ
- 週末に「下味冷凍」や「常備菜」を作ると、忙しい平日も添加物に頼らなくて済む
- スープや味噌汁を常備すれば、インスタント食品の利用を減らせる
4. 「ゼロにしなくてもいい」考え方
- 外食やコンビニで完全に避けるのは無理 → だからこそ “減らせるときに減らす” が大切
- 1日3食のうち1食でも「無添加に近い食事」にすれば、年間で大きな差になる
5. 家族で意識をシェア
- 子どものお菓子選び → 着色料・甘味料が少ないものを一緒に選ぶ
- 高齢の親 → 保存料の少ない漬物や惣菜を勧める
👉 ポイントは「完璧を目指さず、できる範囲で選ぶ」こと。
“小さな積み重ねが未来の健康資産を守る” ことにつながります。
第10章 未来の健康資産を守るために
食品添加物は「今すぐ病気になる」わけではありません。
しかし、長期的に積み重なることで慢性疾患や医療費増大に直結するリスクがあります。
1. 慢性疾患との関係
- 高血圧・糖尿病・肥満 → 加工食品依存が原因のひとつ
- がん → 発色剤や酸化防止剤に関する発がん性の研究報告
- 精神的な不調 → 睡眠障害や不安感と食品添加物の関与を示す研究も
2. 医療費=未来の負担
- 日本の医療費は年々増加、国民一人あたり年間約35万円(厚労省データより)
- 不必要な病気を予防できれば、将来の支出を減らせる
- **「健康は最大の資産」**という視点を持つことが重要
3. 食の選択=自己防衛
- 企業や国の規制だけに頼らず、個人が知識を持って選ぶ
- 「無添加を選ぶ」ことは単なる健康法ではなく、未来への投資
4. 食の自己投資こそが“健康資産”
- 生活習慣病で通院が増えれば、時間もお金も失う
- 逆に、健康な体を維持できれば働く力・自由な時間が増える
- 食への投資は「未来の自分への貯金」になる
👉 つまり、食品添加物をどう扱うかは、単なる「今日の食事の話」ではなく、未来の健康資産と人生の質(QOL)を左右する選択なのです。
まとめ
- 添加物は「便利・安い・美味しい」を実現するために必要とされている
- しかし、長期的なリスクや摂りすぎの現状を無視することはできない
- 「完全に避ける」より「知って選ぶ」ことが大切
- 食の選択は未来の健康資産を守る自己投資である

コメント