脂質異常症

疾患・症状

脂質異常症とは?

脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の濃度が正常範囲を超えて高くなったり、逆に低すぎたりする状態を指します。適切な治療を行わないと、血管に脂質が蓄積し、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながる可能性があります。この記事では、脂質異常症の原因、診断基準、影響、予防・治療方法について詳しく解説します。

コレステロールの役割と循環経路

コレステロールは体に必要な脂質の一種で、細胞膜の構成成分として重要な役割を担っています。また、副腎や性腺(精巣、卵巣)で分泌されるホルモンの材料や、肝臓で生成される胆汁酸の材料としても利用されます。しかし、コレステロールは水に溶けにくいため、リポタンパクと結合して血液中を循環します。

  1. 吸収と胆汁酸の再利用(腸肝循環)
    • コレステロールは食事や胆汁酸の再吸収によって体内に取り込まれます。
    • 胆汁酸は腸管で再吸収され、再び肝臓に戻る仕組み(腸肝循環)があります。
  2. キロミクロンの形成と利用
    • 腸管で吸収されたコレステロールや脂肪酸は、キロミクロンというリポタンパクを形成し、血液中へ放出され、全身の組織に供給されます。
  3. 肝臓でのVLDL合成と変化
    • 肝臓では、余分なコレステロールや合成された中性脂肪がVLDL(超低比重リポタンパク)として血中に放出されます。
    • VLDLは中性脂肪を組織に渡すことでLDL(低比重リポタンパク)に変化します。
  4. LDLとHDLの役割
    • LDLはコレステロールを末梢組織に運ぶ働きをしますが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こすため「悪玉コレステロール」と呼ばれます。
    • HDLは末梢の組織から余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割を持ち、「善玉コレステロール」と呼ばれます。

脂質異常症の診断基準

脂質異常症は、血液検査で測定される脂質の値が基準を超えている場合に診断されます。

  • 高LDLコレステロール血症: LDLコレステロールが140mg/dL以上
  • 境界域高LDLコレステロール血症: LDLコレステロールが120~139mg/dL
  • 低HDLコレステロール血症: HDLコレステロールが40mg/dL未満
  • 高トリグリセリド血症: トリグリセリドが150mg/dL以上

脂質異常症の原因

  1. 食生活の乱れ
    • 高脂肪食(特に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食事)
    • 食物繊維の不足
    • 過剰なカロリー摂取
  2. 代謝異常
    • 肝臓での脂質合成が活発になりすぎる
    • LDL受容体の機能低下により血中のLDLが処理されにくくなる
    • HDLの生成や回収が不十分になる
  3. 生活習慣
    • 運動不足により脂質の代謝が低下
    • 喫煙によるHDLの低下
    • ストレスによるホルモンバランスの乱れ

脂質異常症の合併症

放置すると以下の重大な疾患を引き起こすリスクが高まります。

  • 心臓疾患: 狭心症、心筋梗塞
  • 脳血管障害: 脳梗塞、脳出血
  • 高血圧や腎臓病: 動脈硬化が進行すると血圧が上昇し、腎機能も低下
  • 眼疾患: 眼底出血

予防と治療

  1. 食生活の改善
    • 不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸を含む魚、ナッツ、オリーブオイルなど)の摂取
    • 食物繊維(野菜、海藻、豆類)の摂取を増やす
    • 動物性脂肪を減らし、植物性タンパク質を摂る
  2. 運動習慣の確立
    • 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリング)を週150分以上
    • 筋トレを取り入れ、基礎代謝を上げる
  3. 禁煙と節酒
    • 喫煙はHDLを低下させるため、禁煙を推奨
    • アルコールは適量ならHDLを増やすが、過剰摂取はトリグリセリドを増やすため注意
  4. 薬物療法(必要に応じて)
    • スタチン系薬: LDLを減らし、動脈硬化のリスクを低減
    • フィブラート系薬: 中性脂肪を下げ、HDLを増やす
    • エゼチミブ: 腸管でのコレステロール吸収を抑制

まとめ

脂質異常症は自覚症状がほとんどなく、放置すると動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める重大な疾患です。しかし、適切な食生活や運動習慣の改善、必要に応じた薬物療法を行うことで予防・改善が可能です。健康な生活を維持するために、定期的な健康診断を受け、自分の血液中の脂質バランスを把握することが重要です。

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