うつ病のサインを見逃さない|深刻度別の症状と小さく始めるセルフケア

疾患・症状

はじめに

「なんとなくしんどい」「朝起きるのがつらい」「何もしたくない」──。そんな状態が2週間以上続いていませんか?
うつ病は、現代に生きる多くの人が一度は向き合うかもしれない「こころの病」です。日本では、生涯のうち約15人に1人がうつ病になるとされており、決して珍しいことではありません。

本記事では、うつ病の深刻度別症状、原因、医療機関での治療、さらに「軽症のうちにできる小さなセルフケア」まで徹底的に解説します。自分自身、もしくは大切な人の「こころの不調」に気づき、適切に対処するための知識を身につけましょう。


第1章:うつ病とは何か?医学的な定義と種類

うつ病は「気分障害」のひとつ

うつ病(うつ状態)は、精神医学的には「気分障害」の一種とされ、主に「持続的な抑うつ気分」「興味・喜びの喪失」「意欲低下」などが特徴です。

DSM-5における定義

アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)によれば、以下の症状のうち5つ以上が、同じ2週間の期間内にほぼ毎日見られることが、うつ病の診断の前提とされます。

  • 抑うつ気分
  • 興味または喜びの著しい減退
  • 体重の減少または増加
  • 不眠または過眠
  • 精神運動の焦燥または制止
  • 疲労感または気力の減退
  • 無価値感または過剰な罪責感
  • 集中力の低下または決断困難
  • 死にたいという反復思考や自殺念慮

単極性うつ病と双極性障害の違い

  • 単極性うつ病:気分の落ち込みだけが見られる
  • 双極性障害(躁うつ病):うつ状態と躁状態(ハイテンション・多弁・浪費など)が交互に出現

この2つは治療方針が異なるため、診断は非常に重要です。


第2章:うつ病のサインと症状リスト

精神的なサイン

  • やる気が出ない、楽しめない
  • 涙もろくなる、涙が止まらない
  • 不安感・焦燥感が強まる
  • 将来が悲観的にしか考えられない

身体的なサイン

  • 頭痛、胃の不快感、肩こり
  • 睡眠障害(寝つけない、早朝覚醒、過眠)
  • 食欲の低下または過食
  • 性欲の低下

行動の変化

  • 遅刻・欠勤が増える
  • 人と話すのが億劫になる
  • 趣味への関心が消える
  • SNSやLINEなどの返信が極端に減る

「非定型うつ病」も存在

「他人からの評価に過敏」「体が鉛のように重く感じる」など、典型的でない症状が主に出るタイプもあります。


第3章:深刻度別うつ症状のチェックポイント

軽症うつ

  • 毎日つらいが、気分の回復もある
  • 外では元気にふるまえる「仮面うつ」
  • 睡眠や食事の乱れが少ない

→この段階ではセルフケアが有効。

中等症うつ

  • 楽しかったことが楽しめなくなる
  • 睡眠障害が顕著(特に早朝覚醒)
  • 無気力で生活に支障をきたす
  • 自己評価が著しく低くなる

→医療機関の受診が必要。

重症うつ

  • 希死念慮、自殺企図
  • 食事・入浴すら困難になる
  • 仕事や学校にまったく行けない
  • 他人の声が届かなくなるほど閉じこもる

→精神科入院も視野に入れた対応が必要。


第4章:うつ病の原因と脳のメカニズム

脳内神経伝達物質の異常

うつ病の発症には、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の機能低下が関与しているとされます。

ストレス脆弱性モデル

遺伝的な「うつになりやすさ(脆弱性)」と、生活の中でのストレス(環境因)が重なることで、うつ病が発症するという考え方です。

主な誘因

  • 職場の過労・人間関係の悪化
  • 離婚・失恋・死別などの喪失体験
  • 出産後(産後うつ)
  • 冬季に発症しやすい季節性うつ

第5章:医療機関での診断と治療の流れ

どこを受診すればいい?

  • 精神科:本格的な診断・薬物療法
  • 心療内科:心身症なども対象
  • メンタルクリニック:相談中心、通いやすい

診察内容

  • 問診・心理検査(SDSやBDI)
  • 血液検査でホルモンや内科疾患との鑑別

薬物治療

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  • 三環系抗うつ薬(副作用が強め)

心理療法

  • 認知行動療法(CBT)
  • 対人関係療法(IPT)
  • マインドフルネス認知療法

第6章:軽症うつに効くセルフケア

1. 日光を浴びる

朝日を浴びることでセロトニンが活性化し、体内時計が整います。

2. 朝の散歩

1日10〜15分の軽いウォーキングが気分転換に最適。

3. 食事でトリプトファンを補給

セロトニンの材料となるアミノ酸を含む食品:

  • バナナ
  • 乳製品
  • 豆腐・納豆
  • ナッツ類

4. 睡眠リズムを固定する

「寝る時間より起きる時間を固定」することが回復の鍵。

5. 感情の整理ノート

感情日記、3行日記、感謝ノートなどで思考を“客観視”する習慣。

6. SNS・ニュースから離れる

情報の過多は心の負担に。あえて“情報断食”を。


第7章:うつ病の人にしてはいけないNG対応と正しいサポート

NGワード

  • 「甘えるな」「もっと頑張れ」
  • 「気の持ちようだろ?」
  • 「前はもっと元気だったじゃん」

OKなサポート

  • 「気づいたら話を聞く」姿勢
  • 「何かできることある?」と具体的な手助け
  • 「一緒に病院に行こうか?」の一言が救いになることも

第8章:仕事や学校との向き合い方

休職制度と傷病手当金

うつ病で働けない場合、会社員なら健康保険から「傷病手当金」が支給される可能性があります。

学生なら

  • 保健室登校
  • 学校カウンセラーの利用
  • 不登校支援機関の活用

復帰のステップ

  • 一気に全力復帰しない
  • リワーク支援プログラムを活用する

第9章:うつ病の再発を防ぐために

ストレスマネジメントを習得する

  • 深呼吸、瞑想、ヨガなどを取り入れる
  • 生活に“余白”を設ける習慣を

定期的な通院を継続する

「元気になったから」と通院をやめると再発のリスクが高まります。


第10章:命の危機に直面しているときの対処法

希死念慮が出ているとき

  • 一人にしない
  • すぐに医療機関へ
  • 地域の精神保健福祉センターや「いのちの電話」に連絡を

いのちの電話(日本)

0570-783-556(毎日10時~22時)


まとめ

うつ病は誰でもなる可能性がある“こころの風邪”ですが、重症化すれば命にもかかわる病気です。しかし、早期に気づき、小さなセルフケアから始めれば、多くの場合は回復が望めます。

「つらい」と感じたとき、それを「気のせい」と片づけないでください。あなたのこころが発しているSOSに、静かに耳を傾けることが回復への第一歩です。

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