認知症

疾患・症状

認知症とは?原因・症状・治療法について詳しく解説

1. 認知症とは?

認知症とは、記憶(情報を覚える力である記銘や思い出す力である想起)、理解、判断などの知的能力や認識能力(認知機能)が後天的な脳変化によって障害され、日常生活や社会生活が困難になる状態を指します。「神経認知障害群」とも呼ばれ、特徴的な症状を示します。特に高齢者に多くみられ、代表的な疾患には以下の4つが挙げられます。

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症

これらはそれぞれ異なる原因や特徴を持ち、適切な治療やケアが求められます。

2. 認知症の原因と病態

アルツハイマー型認知症

【原因と病態】

アルツハイマー型認知症は、脳の老化現象によって発生します。主な病理的特徴は以下の3つです。

  1. 老人斑(アミロイドβの蓄積)
  2. 神経原線維変化(タウタンパク質の異常蓄積)
  3. 神経細胞の減少・消失

これらの変化が大脳皮質に広範囲に発生し、脳の萎縮を引き起こします。また、神経細胞間の情報伝達に必要な神経伝達物質(アセチルコリン、セロトニン、ソマトスタチンなど)が減少することで、認知機能の低下が進行します。

【症状と経過】

初期の段階では、

  • **近時記憶(最近の出来事を覚える能力)**の障害
  • 過去の想起が困難になる

といった症状が現れます。次第に、

  • 意欲や自発性の低下
  • 状況や人物認識の障害
  • 理解力や判断力の低下

が進行し、家電の操作や着替えなどの日常生活に支障をきたします。さらに、

  • 言葉の意味が理解できない
  • 会話が成立しなくなる
  • 言語が支離滅裂になる

といった言語障害が生じます。

個人差はありますが、発症から高度の認知症状態に至るまで、8~十数年の経過をたどるのが一般的です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体と呼ばれる異常タンパク質が蓄積することによって発症します。

【主な症状】

  • 幻視(実際には存在しないものが見える)
  • パーキンソン症状(手足の震え、筋肉のこわばり)
  • 自律神経の異常(血圧低下、便秘、排尿障害)

アルツハイマー型認知症とは異なり、症状の変動が激しいのが特徴です。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの血管障害によって脳の一部が損傷し、認知機能が低下する疾患です。

【主な症状】

  • まだら認知障害(障害がある部分とない部分が混在)
  • 感情の起伏が激しい
  • 歩行障害

発症は突然で、脳卒中の後に急激に認知症の症状が出るケースが多くみられます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉と側頭葉が萎縮することによって発症します。

【主な症状】

  • 社会性の喪失(突拍子もない行動、感情の抑制ができない)
  • 言語障害(語彙が減少、言葉の意味が理解できない)
  • 同じ行動を繰り返す(常同行動)

比較的若年で発症することが多く、50~60代での発症例もあります。

3. 認知症の治療法

認知症の根本的な治療法はまだ確立されていませんが、進行を遅らせる治療薬が存在します。

【薬物療法】

1. アセチルコリン分解酵素阻害薬

  • ドネペジル(アリセプト)
  • ガランタミン(レミニール)
  • リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロンパッチ)

2. NMDA受容体拮抗薬

  • メマンチン(メマリー)

3. アミロイドβタンパク質を減少させる新薬

  • レカネマブ(2023年に承認された新しい治療薬)

【非薬物療法】

  • リハビリテーション(運動療法、作業療法)
  • 音楽療法
  • 回想法(昔の記憶を呼び起こす)
  • 家族や周囲のサポート

4. 認知症の予防

認知症は、生活習慣の改善によって発症リスクを軽減できると考えられています。

【予防のための生活習慣】

  1. 適度な運動(ウォーキング、ヨガ、ストレッチ)
  2. バランスの取れた食事(DHAやEPAを含む魚、野菜、果物)
  3. 社会活動(趣味やボランティア活動)
  4. 認知トレーニング(パズル、読書、計算)

まとめ

認知症は高齢者に多く見られる疾患ですが、適切な治療やケアによって進行を遅らせることが可能です。早期発見・早期治療が重要であり、生活習慣の改善や社会参加によって予防に努めることが大切です。家族や医療機関と連携しながら、認知症に対する正しい知識を持ち、対策を進めていきましょう。

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