- はじめに:その「冷たい飲み物」が、逆に体を疲れさせているかもしれない
- 第1章:麦茶|体の熱をやさしく冷ます、夏の定番薬膳茶
- 第2章:甘酒|“飲む点滴”は夏の疲れを癒す滋養飲
- 第3章:冷やしあめ|生姜で“内側から温めて汗を出す”飲み物
- 第4章:とうもろこし茶|むくみを取る“穏やかな利尿茶”
- 第5章:クコの実茶|目と肝をいたわる夏の滋養ドリンク
- 第6章:シソジュース|風邪の予防にもなる“巡り系ドリンク”
- 第7章:ハトムギ茶|“美肌と利湿”を両立する夏の内側ケア
- 第8章:柿の葉茶|ビタミンCが豊富な“抗酸化ドリンク”
- 第9章:梅シロップ|酸味の力で“食欲とやる気”を復活
- 第10章:緑豆湯(リョクトウユ)|体の炎症を抑える“夏のデトックススープ”
- 終章:あなたの体質に合わせて、薬膳飲料を飲み分けよう
- おわりに|飲み物を変えるだけで、夏の過ごし方は変わる
はじめに:その「冷たい飲み物」が、逆に体を疲れさせているかもしれない
夏、冷たいジュースやアイスコーヒーばかり飲んでいませんか?
一時的には涼しくなったように感じても、体の内側から「だるさ・むくみ・胃腸疲れ・頭痛・冷え」を招く原因になっていることもあります。
薬膳の世界では、「季節と体質に合った飲み物」が養生(=健康維持)のカギとされています。
特に日本の夏は高温多湿で、“暑さ”だけでなく“湿気”にも対応する知恵が必要です。
本記事では、薬膳の考え方に基づいて、夏におすすめの飲み物10選を詳しく解説します。
薬膳といっても難しいものではなく、麦茶や甘酒、しそジュースなど、身近な食材でできるものばかり。
今日から取り入れられる養生ドリンクを、体質別に飲み分ける方法までご紹介します。
第1章:麦茶|体の熱をやさしく冷ます、夏の定番薬膳茶
● 薬膳での位置づけ
- 性質:涼性
- 五味:甘
- 帰経:脾・胃
麦茶は、東洋医学で「清熱飲」として分類されます。体の中の“余分な熱”をゆるやかに冷ましてくれます。
● 主な効能
- 清熱(体内の熱を冷ます)
- 利水(むくみを改善)
- 健脾(胃腸を整える)
- 整腸作用(食欲不振や軟便に)
● 薬膳的おすすめポイント
麦茶の原料である大麦は、脾と胃を補うとされており、夏バテによる消化力低下にも◎。また、ノンカフェインなので子どもや妊婦さんにも安心して飲めます。
● 注意点
- 冷やしすぎると逆に胃腸を冷やし、体がだるくなることも
- 冷え体質の人は常温またはぬるめがベター
第2章:甘酒|“飲む点滴”は夏の疲れを癒す滋養飲
● 薬膳での位置づけ
- 性質:温性(米麹)/平性(酒粕)
- 五味:甘
- 帰経:脾・肺・腎
甘酒は夏こそ飲んでほしい発酵飲料。江戸時代の「夏の栄養ドリンク」として、屋台で売られていたほどです。
● 主な効能
- 補気(エネルギーを補う)
- 健脾(消化力アップ)
- 整腸(腸内環境を整える)
- 潤肺(乾燥対策)
● 薬膳的おすすめポイント
- 夏バテで食が進まないときの“朝のエネルギー補給”にぴったり
- 発酵の力で体の内側からめぐりと免疫を支える
● 注意点
- 糖質が多めなので糖尿病やダイエット中の人は少量で
- 米麹甘酒はノンアルコール、酒粕甘酒は微量のアルコールあり
第3章:冷やしあめ|生姜で“内側から温めて汗を出す”飲み物
● 薬膳での位置づけ
- 性質:温性
- 五味:甘・辛
- 帰経:脾・胃・肺
関西の伝統的な夏ドリンク「冷やしあめ」。生姜入りの甘い飲み物ですが、薬膳的には“冷えすぎ”た体にぴったり。
● 主な効能
- 健胃(胃腸を温める)
- 散寒(体を内側から温める)
- 去湿(湿気を飛ばす)
- 発汗(余分な熱を出す)
● 薬膳的おすすめポイント
夏のエアコンで冷え切った体に、生姜の力で“巡り”を回復。汗を少し出すことで、体温調節もスムーズになります。
● 注意点
- 砂糖量が多い場合は、量を控えめに
- 生姜が苦手な人には不向き
第4章:とうもろこし茶|むくみを取る“穏やかな利尿茶”
● 薬膳での位置づけ
- 性質:平性
- 五味:甘・淡
- 帰経:脾・腎・膀胱
トウモロコシの“ひげ”部分(南蛮毛)を煮出したお茶は、薬膳的に利尿作用の高い飲料。
● 主な効能
- 利水(むくみ対策)
- 健脾(胃腸の働きを整える)
- 清熱(内側のこもった熱を出す)
● 薬膳的おすすめポイント
夏は体内に「湿」が溜まりやすく、それがむくみやだるさに繋がります。トウモロコシ茶は穏やかな利水効果で体を軽く保ってくれます。
第5章:クコの実茶|目と肝をいたわる夏の滋養ドリンク
● 薬膳での位置づけ
- 性質:平性
- 五味:甘・酸
- 帰経:肝・腎・肺
「飲む目薬」とも呼ばれるクコの実は、薬膳的に“肝と目”を補う重要な食材。
● 主な効能
- 滋補肝腎(肝・腎の強化)
- 明目(視力ケア)
- 潤肺(乾燥対策)
- 安神(心を穏やかに)
● 薬膳的おすすめポイント
紫外線やスマホで目が疲れている人にぴったり。見た目も華やかで、SNS映えする点でも人気です。
第6章:シソジュース|風邪の予防にもなる“巡り系ドリンク”
● 薬膳での位置づけ
- 性質:温性
- 五味:辛
- 帰経:肺・脾
赤しそや青しそを煮出して砂糖やクエン酸を加えたジュース。薬膳的には「外からの邪気(風寒)を防ぐ」作用があります。
● 主な効能
- 発汗(冷えを改善)
- 解表(風邪の初期症状を散らす)
- 理気(気の巡りを整える)
● 薬膳的おすすめポイント
食欲が落ちているときや、気分が晴れないときにおすすめ。シソの香りは“気を巡らせて、気分を明るくする”働きがあります。
第7章:ハトムギ茶|“美肌と利湿”を両立する夏の内側ケア
● 薬膳での位置づけ
- 性質:涼性
- 五味:甘・淡
- 帰経:脾・肺
“イボ取り茶”としても有名なハトムギ茶は、体の余分な水分を出す「利湿」効果と、美肌効果が期待できます。
● 主な効能
- 利湿(むくみや水太り対策)
- 健脾(胃腸ケア)
- 排膿(吹き出物などの改善)
- 美肌(皮膚のターンオーバー促進)
第8章:柿の葉茶|ビタミンCが豊富な“抗酸化ドリンク”
● 薬膳での位置づけ
- 性質:涼性
- 五味:甘・渋
- 帰経:肺・心
柿の葉茶は抗酸化作用が高く、喉や毛細血管を守る働きもあります。
● 主な効能
- 清熱(体内の熱を下げる)
- 止血(毛細血管の補強)
- 補気(疲労回復)
- 抗酸化(老化防止)
第9章:梅シロップ|酸味の力で“食欲とやる気”を復活
● 薬膳での位置づけ
- 性質:涼性
- 五味:酸・甘
- 帰経:肝・脾・肺
青梅を漬けて作る梅シロップは、酸味と甘味のバランスが夏にぴったり。梅は古来より“食欲を呼び戻す薬”とされてきました。
● 主な効能
- 生津(唾液や消化液の分泌促進)
- 消暑(熱を和らげる)
- 補気(元気を回復)
- 整腸(腸の働きを整える)
第10章:緑豆湯(リョクトウユ)|体の炎症を抑える“夏のデトックススープ”
● 薬膳での位置づけ
- 性質:寒性
- 五味:甘
- 帰経:心・胃・膀胱
緑豆を煮出して作る「緑豆湯」は、中国の夏には欠かせないデトックス飲料。冷やして飲めば、まさに“飲む日傘”。
● 主な効能
- 清熱解毒(熱によるニキビ・吹き出物対策)
- 利尿(むくみ軽減)
- 消暑(熱中症予防)
- 整腸(下痢・便秘の緩和)
終章:あなたの体質に合わせて、薬膳飲料を飲み分けよう
薬膳では「体質」と「季節」に合わせて飲み物を選ぶのが基本です。
たとえば…
- 冷え性なら: 甘酒・冷やしあめ・しそジュース
- 熱がこもるなら: 麦茶・緑豆湯・柿の葉茶
- むくみ体質には: ハトムギ茶・とうもろこし茶
- 目やメンタルが疲れ気味なら: クコの実茶・梅シロップ
冷たい飲み物も、体を労る薬膳視点で選べば、夏を元気に乗り切る味方になります。
おわりに|飲み物を変えるだけで、夏の過ごし方は変わる
薬膳は“特別な何か”ではありません。
身近な素材で体調を整える「食の知恵」です。
夏は、体が最も消耗しやすく、心と胃腸がバテやすい季節。
ぜひ今日から、冷蔵庫の飲み物をちょっと見直してみてください。
あなたの体が、静かに喜んでくれるはずです。

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