はじめに|がんは「正しく知る」時代へ
日本では今や2人に1人ががんにかかる時代です。医療の進歩により治るがんも増えてきましたが、「がん=怖い病気」「不治の病」というイメージは根強く残っています。しかしがんは、早期発見・早期治療が非常に重要であり、生活習慣や知識によって予防の可能性もある病気なのです。
この記事では、がんとは何か、その原因、症状、検査、治療法、予防の知識、家族のサポートまでがんの基礎知識を網羅的にわかりやすく解説します。
「今はまだ健康な方」にも「家族にがん経験者がいる方」にも、知っておいて損のない情報です。
第1章|がんとは何か?
1-1 正常な細胞とがん細胞の違い
私たちの体は約37兆個もの細胞からできています。細胞は一定のサイクルで「分裂・増殖・死」を繰り返しています。しかし、何らかの原因で細胞分裂のコントロールが狂い、無限に増殖する細胞が現れることがあります。これががん細胞です。
1-2 良性腫瘍と悪性腫瘍
腫瘍には「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(がん)」があります。
- 良性腫瘍:増殖はするが、周囲に侵食したり転移はしない
- 悪性腫瘍(がん):周囲の組織に浸潤し、血液やリンパに乗って遠隔転移する可能性がある
つまり、悪性腫瘍=がんが体に重大な影響を及ぼすのです。
1-3 日本人に多いがん
男女別がん罹患ランキング | 主な部位 |
---|---|
男性 | 前立腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん |
女性 | 乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、子宮がん |
年齢とともに発症率は上昇し、50代以降がピークになります。
第2章|がんの原因とリスク要因
2-1 遺伝的要因
「がん家系だから自分もなるのでは…」と心配する人も多いですが、がん全体の約5〜10%程度は遺伝要因と考えられています。BRCA遺伝子変異などが有名です。
2-2 環境要因
がんの大部分(約90〜95%)は**後天的な要因(生活習慣・環境)**によるものです。
- 喫煙:肺がん・食道がん・膀胱がんなどリスク増大
- 飲酒:食道がん・肝臓がん・口腔がん
- 肥満・運動不足:大腸がん・乳がん・子宮体がん
- 感染症:ピロリ菌(胃がん)、HPV(子宮頸がん)、肝炎ウイルス(肝臓がん)
2-3 加齢
年齢が最大のリスク要因とも言われています。細胞分裂のエラー蓄積が年齢とともに増加するためです。
2-4 ストレスとの関係
ストレスが直接がんを「作る」科学的証拠はまだ明確ではありませんが、免疫力低下や生活習慣悪化を通じてがんリスクに影響する可能性はあります。
第3章|がんの症状とは?
3-1 早期がんは無症状が多い
初期のがんは無症状のことが多いのが怖いポイントです。がんが進行するにつれ、
- 痛み
- 出血
- 体重減少
- 食欲不振
- しこり
- 声がれ
- 長引く咳
などの症状が現れる場合があります。
3-2 症状が出やすい・出にくいがん
出やすい | 出にくい |
---|---|
食道がん、膀胱がん | 肺がん、腎臓がん(早期は無症状) |
3-3 「がんかな?」と思ったら
- 早めの受診(かかりつけ医、消化器内科、乳腺外科など部位別)
- 地域のがん相談支援センターも利用可能
第4章|がんの検査と診断
4-1 健康診断で見つかるケース
会社や自治体の健康診断の一環で異常が見つかり、二次検査でがんが判明するケースも。
4-2 がん検診
【推奨されているがん検診】
- 胃がん:内視鏡
- 大腸がん:便潜血検査
- 乳がん:マンモグラフィー
- 子宮頸がん:細胞診
- 肺がん:胸部X線
4-3 画像診断・血液検査
- CT・MRI・PET:体内の腫瘍を可視化
- 腫瘍マーカー:血液中の指標だが万能ではない
第5章|がんの治療法
5-1 手術療法
がんのある部位を切除する治療。早期がんでは根治が期待できる。
5-2 放射線療法
X線などを腫瘍に照射し、がん細胞を破壊。
5-3 化学療法(抗がん剤治療)
薬でがん細胞の増殖を抑える。副作用が課題。
5-4 免疫療法
自分の免疫力を高めてがん細胞を攻撃させる。最近注目の治療法。
5-5 緩和ケア
症状緩和とQOL向上を目的とするケア。治療の初期段階から併用可能。
第6章|がんの予防と生活習慣
6-1 食事とがん予防
- 野菜・果物を十分に摂取
- 食物繊維の摂取
- 赤身肉・加工肉は控えめに
6-2 運動習慣
中強度の運動(ウォーキングなど)を週150分以上推奨。
6-3 禁煙・節酒
- 禁煙は全てのがん予防に有効
- 飲酒は少なければ少ないほどリスク低減
6-4 ワクチン接種
- HPVワクチン → 子宮頸がん予防
- B型肝炎ワクチン → 肝臓がん予防
第7章|家族ががんになったとき
7-1 家族としてできること
- 情報整理の手助け
- 本人の意思を尊重したサポート
- 必要ならがん相談支援センターへ相談
7-2 相談窓口・支援団体
- がん情報サービス
- がん患者団体
- 地域の医療ソーシャルワーカー
第8章|最新のがん研究・医療の進歩
8-1 がんゲノム医療
患者ごとの遺伝子変異に合わせた治療法選択。パーソナライズド医療が進行中。
8-2 AIによる診断補助
AIが画像診断支援を行い、見落とし防止・診断精度向上が期待。
8-3 希少がんへの挑戦
治験・新薬開発が進行し、治療選択肢が広がってきている。
第9章|がんと向き合って生きる
9-1 QOLを高める工夫
- 食事・運動・心のケア
- 就労支援を活用して働きながら治療
9-2 がんサバイバーシップ
治療後の生活、再発予防・心理的サポート、社会復帰の支援。
第10章|まとめ|がんは「正しく知る」ことで怖さが変わる
がんは**「怖がる」より「正しく知る」ことが重要な時代**です。
- 早期発見で治るがんは増えている
- 生活習慣次第でリスクは下げられる
- 医療の進歩は日進月歩
ぜひ家族・自分の健康を守るためにも、こうした知識を味方につけていきましょう。

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