脳梗塞

疾患・症状

脳梗塞とは?

脳梗塞とは、脳血管の異常によって局所的な機能障害が24時間以上続く状態を指します。その中でも、血管が詰まることで発症する虚血性の病態を脳梗塞といいます。

脳梗塞の分類と特徴

脳梗塞は発症の仕方によって、以下の3つに分類されます。

  1. 血栓性脳梗塞:動脈硬化によって血管が狭くなり、そこに血栓が形成されて詰まるタイプ。
  2. 塞栓性脳梗塞:心臓など別の部位でできた血栓が血流に乗り、脳の血管に詰まるタイプ。
  3. 血行力学性脳梗塞:血圧が低下することにより、狭くなった血管部分で血流が途絶えるタイプ。

これらのいずれの場合も、血管が狭くなったり閉塞したりすることで脳への血流が妨げられ、酸素や栄養が供給されなくなります。その結果、脳細胞が壊死し、脳梗塞を引き起こします。

一方、血栓が一時的に血管を塞ぎ、虚血による症状が24時間以内に消失する場合は、一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)と呼ばれます。TIAは脳梗塞へ移行する前兆発作と考えられており、注意が必要です。

脳梗塞の種類と原因

脳梗塞は、詰まった血管の種類や原因によって以下の4つに分類されます。

1. アテローム血栓性脳梗塞

比較的太い血管にアテローム(粥腫)が形成され、粥状動脈硬化が進行して血管が閉塞することで発症します。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などが主な危険因子とされています。

2. ラクナ梗塞

太い血管から分かれた穿通枝と呼ばれる小血管が閉塞することで発症します。高血圧による血管壁の脂肪硝子変性(リポヒアリノーシス)が主な原因とされ、ラクナ(lacuna)とはラテン語で「小さな空洞」を意味します。

3. 心原性脳塞栓症

心臓内で形成された血栓が脳の血管に到達して閉塞を引き起こすタイプです。特に心房細動がある場合に血栓ができやすく、高齢者の発症率が高まっています。

4. その他の脳梗塞

動脈解離、静脈洞血栓症、血管炎などが原因となることもあります。

脳梗塞の症状

脳梗塞の症状は、閉塞した血管の種類と部位によって異なります。

閉塞した血管現れる症状
前大脳動脈反対側の下肢の強い麻痺
中大脳動脈反対側の麻痺、知覚障害、失語、半側空間無視、失行
後大脳動脈同名半盲(両眼とも、左右どちらか同じ側の半分の視野が欠ける)
脳底動脈意識障害、閉じ込め症候群(四肢麻痺および発語不能だが、意識はある)
内頸動脈意識障害、反対側の麻痺、失語症などの高次脳機能障害
椎骨動脈めまい、失調(姿勢の異常や歩行時のふらつき)、眼球運動障害

脳梗塞の診断と治療

診断方法

脳梗塞の診断には、以下のような画像診断が用いられます。

  • CT(コンピュータ断層撮影):脳出血との鑑別に有用。
  • MRI(磁気共鳴画像):早期の脳梗塞を検出可能。
  • MRA(磁気共鳴血管撮影):血管の閉塞や狭窄を評価。
  • 頸動脈エコー:動脈硬化の程度を調べる。
  • 心エコー:心原性脳塞栓症の原因を特定する。

治療方法

脳梗塞の治療は、発症直後の急性期治療と、再発予防を目的とした慢性期治療に分かれます。

1. 急性期治療
  • 血栓溶解療法(t-PA静注療法):発症4.5時間以内であれば、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を静脈注射して血栓を溶かす。
  • 血管内治療:カテーテルを用いた血栓回収療法。
  • 抗血小板療法:アスピリンなどを使用。
2. 慢性期治療(再発予防)
  • 抗血小板薬の投与
  • 抗凝固療法(心房細動がある場合)
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理
  • 生活習慣の改善(禁煙・適度な運動)

予防とリスク管理

脳梗塞の発症リスクを下げるためには、以下のポイントが重要です。

  1. 高血圧の管理:降圧薬の適切な使用と減塩。
  2. 糖尿病の管理:食事療法や運動療法を徹底。
  3. 脂質異常症の改善:コレステロール値を適正に保つ。
  4. 禁煙:喫煙は動脈硬化を促進。
  5. 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動。
  6. バランスの良い食事:魚や野菜を多く摂取。

まとめ

脳梗塞は命に関わる病気であり、早期発見と適切な治療が重要です。また、生活習慣を見直すことで予防することが可能です。健康診断を定期的に受け、リスク管理を徹底しましょう。

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